研究概要 |
エリスロポエチン(EPO)は赤血球の前駆細胞の増殖・分化に必須のサイトカインである。 本研究の目的はEPOが非虚血性心筋症(抗ガン剤誘発性心筋症、大型陳旧性心筋梗塞由来心筋症および心不全由来心筋症)に対しても心機能改善効果を持つかどうか、さらにそのメカニズムは何かを検討することである。本年度は以下のことを明らかにした。 1.EPOは抗ガン剤(ドキソルビシン)誘発性心筋症モデルマウス心において、低下したGATA-4保持を介してミオシンへビーチェイン、トロポニンI,デスミンの低下をブロックし、抗心筋細胞変性作用を示す。EPOは増大するCox-2の発現を低下させ、抗線維化作用および抗細胞浸潤作用を持つ。EPOはEPO受容体を増やしERK系を活性化する。同じ心筋症モデルに対する顆粒球コロニー刺激因子の効果においてもEPOと同様の分子メカニズムを確認した。 2.EPOはマウスの大型陳旧性心筋梗塞由来心筋症ならびに腎不全由来心筋症に対し、左室拡張を予防し、心機能を改善した。細胞浸潤、線維化も改善した。改善のメカニズムとしては抗アポトーシス作用よりは、Stat、AktならびにEPO受容体発現の誘導を介した障害性サイトカインの産生予防や酸化ストレスの減弱が重要と思われた。 3.in vivoすなわち培養心筋細胞においてEPOはドキソルビン誘発性心筋細胞障害モデルでは1と同様のメカニズムで、一方H_2O_2酸化ストレス細胞障害モデルでは2と同様のメカニズムで心筋細胞障害をブロックした。 4.これまでEPOは静注されていたが、EPOをしみこませたgelatin sheetがウサギ心筋梗塞モデルで有効であることが示され、今後非虚血性心筋症への応用の展望が開かれた。
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