研究概要 |
18年度にラット急性心筋梗塞モデルに対するヒト胎盤成長因子(human placental growth factor:hPlGF)プラスミドを用いた遺伝子治療を試み、虚血心筋内における血管新生促進、心筋アポトーシス抑制、左室リモデリング抑制、左室機能保持等の治療効果を確認した。19年度には、さらに研究を深め、ブタ慢性心筋虚血モデルを用いた前臨床研究を実施した。家畜ブタの左回旋枝にアメロイドコンストリクターを留置し、4週間後に慢性心筋虚血の誘導をNOGA心内膜マッピングにより確認した。同時に同マッピングで確認された虚血部位の心筋内へhPlGFプラスミド(500μg(Lo群)または1000μg(Hi群))またはempty vector(Mock群,1000μg)をMyostarカテーテルを用いて注入した(各群n=5-7)。 注入4週後に治療効果を検討した。NOGAマッピングによる左室虚血部面積比の改善度、心エコー図による左室駆出率(EF)・局所壁運動スコア(RWMS)の改善度は、Mock群に比してHi群とLo群の両群で有意に良好であった。冠動脈造影によるRentropスコア(側副血管発達度)は各群間に差がなかったが、組織学的毛細血管密度はMock群に比してHi群とLo群の両群で有意に高値であった。 以上の結果から、慢性心筋虚血に対するhPlGFプラスミド遺伝子治療は、血管造影では非可視の毛細血管の新規形成を促進することにより、心筋虚血を軽減し、左室機能を改善し得ることが示唆される。
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