研究課題
基盤研究(C)
老化制御遺伝子Sirt1が血管老化さらには血管障害に寄与するかどうかを検討することが本研究の目的である。今年度は、培養ヒト臍帯静脈由来内皮細胞を用いて、早期老化の過程におけるSirt1の役割について検討した。特異的阻害薬sirtino1を用いたSirt1の活性阻害およびsiRNAを用いたSirt1のノックダウンにより、細胞は早期老化形質を示した。具体的に、Sirt1阻害10日目には、senescence-associated(SA)-βgal活性の増加、細胞増殖能の低下と細胞の扁平大型化といった老化形質が誘導された。さらに、Sirt1阻害によって、PAI-1発現の増加、内皮型一酸化窒素合成酵素の発現と活性低下といった内皮細胞機能低下が認められた。また、Sirt1阻害はp53のタンパク発現レベルを変えることなくそのアセチル化を増強した。細胞増殖能の低下は、EGF刺激に対するMAPキナーゼ活性化の減弱を伴ったものであった。逆に、Sirt1遺伝子の過剰発現により、過酸化水素誘導性のSA-βgal活性増加、細胞増殖能低下と細胞の扁平大型化といった早期老化形質およびPAI-1発現増加とeNOS発現低下といった機能障害をすべて回復することができた。以上の結果から、Sirt1はおそらくp53の脱アセチル化を介して血管内皮細胞の早期老化防止および機能維持に作用することが考えられた。次年度は、動脈硬化など血管障害を含めたin vivoにおけるSirt1の役割およびSirt1の発現・活性制御による血管病の治療への応用を目指して研究を進める予定である。
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