研究概要 |
本研究は、細胞分化と形態形成が細胞間相互作用によりどのように営まれるのか、その中で組織幹細胞がどのような細胞系譜の中でどのように維持されるのかを、頚胸部領域をモデルとして明らかにする。A型エンドセリン受容体(ETAR)遺伝子プロモーター下に変異型lox配列をノックインし、ETAR遺伝子可変マウスを作成した。このマウス作成時のES細胞を用い、RMCE(recombinase-mediated cassette exchange)の系により、各種cDNAのノックインマウスを作成し、表現形を検討した。 1.ETAR cDNAをノックインし、ETAR遺伝子欠損による表現型を解析したところ、完全にレスキューされていたことから、ETARプロモーター下に遺伝子発現させるこのRMCEの系が機能していることが確認された。 2.RMCEによるlacZ遺伝子のノックインマウスでは、マーカー遺伝子lacZの胎生期での発現は、ETARのin situ hybridizationとほぼ一致した。特に、神経堤細胞以外のETAR発現細胞で、心・大血管形成に寄与する一次心臓領域の一部の細胞群が確認され、RMCEを用いたEGFPノックインマウスやdye注入により、目的とする細胞群の遊走・増殖過程や貢献する機能が明らかになりつつある。 3.ETBRノックインマウスではETARの異常を一部のみしかレスキューできないことより、細胞株と違い鰓弓形成においてはETARとETBRのシグナルは必ずしも同等ではないことが明らかになった。その表現型は頭部神経堤細胞特異的なGq蛋白ノックアウトマウスと同等であることから、下顎の主要な部分はETBRと互換性がなくGq蛋白を介したシグナルであることが明らかになった。(Dev.135:755,2008) 4.RMCEにて他遺伝子を順次ノックイン中であり、ET-1の形態形成誘導の詳細がさらに明らかになろうとしている。
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