本研究では、アルドステロン負荷高血圧モデル動物での心血管障害における、内因性アンジオテンシン(Ang)IIの役割を検討することで心血管障害におけるAng IIとアルドステロンのクロストークを解明することを目的としている。今回、アルドステロン負荷高血圧ラット(Aldoラット)に選択的アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン:EPL)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(カンデサルタン:ARB)、抗酸化薬(Tempol:TEM)を投与し、血管壁でのアンジオテンシン変換酵素(ACE)を含む向炎症性遺伝子の発現動態、アンジオテンシン(Ang)II含量、酸化ストレスおよびNADPHオキシダーゼサブユニットの遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。アルドステロンによる高血圧、冠動脈周囲線維化はEPL、ARB、TEM投与により抑制された。Aldoラットの大動脈壁ではACE mRNA発現および活性の増加とAng II含量の増加が認められた。Aldoラットの大動脈壁では各種向炎症性遺伝子群mRNAの発現増加が認められ、EPL投与ですべて抑制されたが、ARB、TEM投与は個々の遺伝子により異なる抑制効果を示した。Aldoラットの大動脈壁での酸化ストレス(4-HNE)の増加はEPL、ARB、TEM投与により抑制された。また、NAD(P)Hオキシダーゼの各サブユニット(p22phox、gp91phox、p47phox)mRNAの発現増加はEPLにより抑制されたが、ARBとTEMはp47phox mRNA発現のみを抑制した。以上よりAldoによる高血圧、血管炎症・酸化ストレスの発症機序の一部には血管壁RAS、特にACEの発現増加が関与すると考えられる。
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