研究概要 |
本研究では、アルドステロン(Aldo)による心血管障害における、内因性アンジオテンシン(Ang)IIの役割を検討することで心血管障害におけるAng IIとAldoのクロストークを解明することを目的としている。AldoとAng IIは共に心血管組織に酸化ストレスを誘導することが知られており、今回ラット大動脈より初代培養した血管内皮細胞におけるAldoの酸化ストレス誘導機構について検討した。Aldo刺激でRAECでの活性酸素(O_<2->)産生は時間依存性(6-24h)および濃度依存性(10^<-9>-10^<-6>M)に増加が認められた。この効果は鉱質ステロイド受容体(MR)拮抗薬eplerenone, NAD(P)H oxidase阻害薬apocynin,低分子量G蛋白阻害薬CD toxin A(の前処置によりほぼ完全に抑制され、MRを介した低分子量G蛋白によるNAD(P)Hオキシダーゼ活性化の関与が示唆された。NAD(P)Hオキシダーゼの活性化には低分子量G蛋白のRacが関与することが知られいるが、Aldo刺激によりRac-1の活性化はO_<2->産生と同様の時間経過を示し,eplerenoneの前処置により抑制されること確認された。さらにアデノウイルスを用いたドミナントネガティブ変異Rac1 (N17Rac1)の遺伝子導入によりAldoによるO_<2->産生は完全に抑制された。以上よりAldoは血管内皮細胞でMRを介した低分子量蛋白Rac1の活性化によりNAD(P)H oxidaseを介してO_<2->産生を誘導することが明らかとなった。また血管平滑筋細胞においてAng IIがRac1を介した同様のNAD(P)Hオキシダーゼ活性化機構を示すことが報告されており、AldoとAng IIは共通の細胞内情報伝達系を介して心血管障害作用を示すと考えられる。
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