研究概要 |
I.エリスロポエチン(EPO)誘導体の血管再生における機序に関する基礎検討 (1)アシアロEPO (A-EPO)の作用機序:A-EPOの虚血下肢救肢効果は、ほぼ骨髄細胞移植治療に匹敵した。A-EPOは、骨格筋のBCl-XLの増加を介して抗アポトーシス効果を誘導し、また骨格筋のPLGF産生の増加を介して血管新生効果を惹起することで虚血下肢を救済した。 (2)A-EPO, EPOのラット冠動脈虚血再灌流モデルへに対する効果:心筋虚血に対する効果を、モデル作成直後から1日1回、連続7日皮下注射によって治療した。A-EPO:400,4,000,40,000IU/kg/日、及びEPO4001U/kg・日のいずれにおいても心筋虚血範囲の縮小効果は認めなかった。次に0smotic pumpを用いて5001U/kg/日のEPOまたはA-EPOの3週間持続投与を行ったところ、心筋壊死範囲の縮小を認めた。この際、EPO投与群では、多血症と脾腫(髄外造血)を認めたが、A-EPOにはこのような副作用は認められなかった。 (3)来年度の予定:新しいEPO誘導体(組織親和性EPO)を用いて、心筋及び下肢虚血モデルに対する効果を検討する。 II.急性心筋梗塞患者に対するEPO投与を用いた臨床治験 (1)症例登録状況:新潟大学6例、昭和大学15例、獨協大学1例、新潟こばり病院2例の合計24例 (2)EPO投与による短期効果(1ヶ月以内):EPO12,000 1U 30分の点滴静注投与による影響について、EPO投与8例と非投与5例において検討した。赤血球数、血圧の推移は2群間に有意な差はなく、当初、懸念された多血症や高血圧などの有害事象は認められなかった。 (3)EPO投与による長期効果(6ヶ月):現時点において最終評価はしていない。今年度でこのプロトコールは中止として、心筋シンチ解析センターにてその長期効果を検討する予定である。 (4)来年度の予定:EPO12,000 1U投与の安全性と有効性を評価し、EPOの投与量を数倍に増量して、再開する予定である。
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