研究概要 |
I.エリスロポエチン(EPO)誘導体の血管再生における機序に関する基礎検討 (1)アシアロEPO(A-EPO)の作用機序:A-EPOの虚血下肢救肢効果は、ほぼ骨髄細胞移植治療に匹敵した。A-EPOは、骨格筋のBCI-XLの増加を介して抗アポトーシス効果を誘導し、また骨格筋のPLGF産生の増加を介して血管新生効果を惹起することで虚血下肢を救済した。 (2)A-EPO,EPOのラット冠動脈虚血再灌流モデルに対する効果:心筋虚血に対する効果を、モデル作成直後から、Osmotic pumpを用いて500 IU/kg/日のEPOまたはA-EPOの3週間持続投与を行ったところ、心筋壊死範囲の縮小を認め、EPOに比べA-EPOの効果がより強かった。実際に、A-EPO群においては、VEGF,CD31,eNOS,Bcl-XLなどのmRNAが増加しており、A-EPOによる直接的な抗アポトーシス効果と間接的な血管再生効果によると推定された。 II.急性心筋梗塞患者に対するEPO投与を用いた臨床治験 (1)症例登録状況:新潟大学8例、昭和大学20例、獨協大学1例、新潟こばり病院4例の合計33例 (2)EPO投与による短期効果(1ケ月以内):EPO 12,000 IU 30分の点滴静注投与による影響について、EPO投与12例と非投与11例において検討した。赤血球数、血圧の推移は2群間に有意な差はなく、当初、懸念された多血症や高血圧などの有害事象は認められなかった。 (3)EPO投与による長期効果(6ケ月):現時点において最終評価はしていない。今年8月でこのプロトコールは中止として、心筋シンチ解析センターにてその長期効果を検討する予定である。 (4)血中hepcidin濃度:鉄吸収においてhepcidinは中心的な役割を果たしている。今回、急性心筋梗塞においてもhepcidinの血中濃度の推移が特徴的であることを突き止めた(論文投稿準備中)。
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