エンドセリン作用阻害による抗肥満治療戦略の確立を目標として下記研究を行った。 1.エンドセリン拮抗薬投与による抗肥満作用解析 食餌性肥満モデルマウスおよび遺伝的肥満モデルマウスに対し、エンドセリン拮抗薬を投与することによって、肥満が抑制できるかどうか、また一旦肥満をきたしてから投与することによって、肥満を改善できるかどうかを検討した。薬剤により肥満の抑制はできなかったが、脂肪組織の炎症は抑制された。 2.エンドセリンによる抗肥満作用の遺伝学的検討 エンドセリン欠損マウスと遺伝的肥満モデルを交配することにより、肥満が抑制されるか、また抑制される場合、代謝異常の改善が認められるかどうかについて検討した。現在、交配が終了し、解析中である。 3.RNA干渉を用いた抗肥満作用解析 申請者はエンドセリンの産生を抑制するRNA干渉を設計し、培養細胞系でそのノックダウン効果を確認した。このRNAを産生するアデノウイルスを作成し、食餌性肥満モデルおよび遺伝的肥満モデルの静脈内もしくは脂肪組織に直接注入することにより、肥満を抑制できるかどうかを検討した。その結果、肥満の抑制はできなかったが、脂肪組織の炎症は抑制できた。 4.エンドセリン受容体拮抗薬の臨床的効果の解析 ボセンタン(商品名トラクリア)は世界初の経口エンドセリン受容体拮抗薬であり、肺高血圧症の身体機能の向上および生命予後の改善が認められる薬剤である。そこで本薬剤を使用している患者における内蔵脂肪、耐糖能、脂質の変化などを経時的に観察し、エンドセリン受容体遮断におけるメタボリックシンドロームの進展抑制効果について評価・検討を行った。その結果ボセンタンが脂質異常症の改善に効果のある結果を得て、現在データを解析中である。
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