研究概要 |
平成18年度はDHEA-Sの抗動脈硬化作用およびその機序をin vitroで明らかにすることを目的として実験を行った。DHEAにはインスリン抵抗性改善作用,抗炎症作用などを有し動脈硬化を改善することが期待される.ApoE(-/-)マウスの動脈硬化はヒトのそれと類似しており,ヒト動脈硬化の機序の解明に有用なモデル動物である.このマウスの動脈硬化の特徴はaortic sinusのプラーク形成である。そこで、6週令の雄ApoE(-/-)マウスにDHEA-Sを投与し,動脈硬化が抑制されるか検討した.0.2%,0.4%のDHEA・SをWestern Dietに混ぜてApoE(-/-)マウスに3ヶ月間投与し、DHEA-S投与群、非投与群で大動脈のaortic sinusのプラーク面積を比較した.また,抗動脈硬化作用がDHEA-Sの投与量に依存するか、脂質に対する影響について、ならびに、プラーク部位の病理組織学的検討を行った。DHEA-S投与群、非投与群で大動脈のaortic sinusのプラーク面積を比較したところ、プラーク面積はDHEA-S投与により約半分に縮小し、その縮小の程度にはDHEA-Sの容量依存性の効果が確認された。次に、免疫染色を用いてプラーク部位の,マクロファージやT細胞の浸潤の程度を比較したところ、マクロファージの浸潤が、DHEA-S投与により有意に抑制された.一方,血中脂質(VLDL-cholesterol LDL-cholesterol, HDL-cholesterol)はDHEA-S投与の有無により有意な差を認めず、DHEA-Sの抗動脈硬化作用は脂質低下によるものではないことが示唆された。 次に,抗動脈硬化作用の作用機序を解明するため大動脈よりmRNAを採取し,リアルタイムPCR法により炎症性サイトカイン(Monocyte chemoattractant protein-1、IL6、IL-8、Interferonγ、TNF等)発現の差異について検討した。途中であるが、DHEA-S投与によりMCP-1の発現が抑制されることが示唆された。今後、他の炎症性サイトカインについて検討していく予定である。
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