研究概要 |
DHEA-Sの低下と心血管疾患(CVD)の発症率が負の相関をすると報告されている.また,DHEA-Sの補充によりその抗動脈硬化作用によりCVDの発症が低下する可能性が示唆されているが詳細は不明である。 平成18~19年度においてDHEA-Sの抗動脈硬化作用およびその機序を功in vitroで明らかにすることを目的として検討を行った。DHEA-S入りの餌をアポEノックアウトマウスに3ヶ月間投与し,非投与群と大動脈のプラーク面積を比較した.また組織標本にて,免疫染色を行い,マクロファージやT細胞の浸潤の程度を比較し,更に,血中脂質に対するDHEA-Sの効果について比較した.平成19年度は,抗動脈硬化作用の作用機序を解明するため大動脈よりmRNAを採取し,リアルタイムPCR法により炎症性サイトカイン(Monocyte chemoattractant protein-1, IL-6、IL-8、Interferonγ、TNF等)発現の差異について検討する。 結果:DHEA-S投与により,ApoE(-/-)マウスの動脈硬化の特徴であるaortic sinusのプラーク形成が約50%抑制された。また,免疫組織学的にマクロファージの浸潤の有意な抑制が明らかになった。DHEA-S投与による血清脂質の変化について検討した。投与群、非投与群との間にT.cholesterol, trygliceride共に有意差を認めず,脂質低下以外の因子の関与が示唆された.次にその機序解明のため、局所の種々のサイトカインの発現をreal time PCR法を用いて検討した.MCP-1の有意な発現低下が観察された。DHEAはこうした炎症性サイトカインの産生を抑えることによりマクロファージの浸潤を抑制し,ひいては動脈硬化を抑制していることが示唆された.
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