研究課題/領域番号 |
18590824
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
渡部 琢也 昭和大学, 医学部, 准教授 (30297014)
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研究分担者 |
宮崎 章 昭和大学, 医学部, 教授 (70253721)
平野 勉 昭和大学, 医学部, 教授 (00167610)
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キーワード | 血管作動性物質 / 高血圧 / 動脈硬化 / 合併症 / ウロテンシンII / サリューシン / マクロファージ泡沫化 |
研究概要 |
本研究は、血圧制御に重要な新規血管作動性物質(ウロテンシンII、サリューシン)が、マクロファージの泡沫化および動脈硬化形成を制御する分子機構を解明した。同時に、両物質の高血圧および動脈硬化性疾患との関連を検討した。 最強の血管収縮作用を有するウロテンシンIIは、培養ヒト単球由来マクロファージにおいて細胞内コレステロールエステル化酵素ACAT1の発現を充進させ、泡沫化を促進させた。またウロテンシンIIは血管平滑筋細胞の増殖壼促進させ、更にセロトニン、酸化LDL、活性酸素種の存在下ではその作用は相乗的に増大された。本態性高血圧患者での血漿ウロテンシンII濃度は、収縮期血圧および頚動脈硬化の進展度と有意な正相関を示した。 サリューシンαおよびβは同前駆体(プロサリューシン)から生じるが、サリューシンβには強力な血圧低下作用がある。培養ヒト単球由来マクロファージの泡沫化はサリューシンβにより促進され、サリューシンαにより抑制された。その分子機構として各々のACAT1発現充進または抑制が起因していることを証明した。急性冠症候群患者の冠動脈病変部では、サリューシンβは血管平滑筋細胞、線維芽細胞、マクロファージ由来泡沫細胞に強く発現していた。一方、サリューシンαの発現はほとんど認められなかった。現在測定可能となった血清サリューシンα濃度は、急性冠症候群、労作性狭心症、陳旧性心筋梗塞患者では、本態性高血圧患者や健常者に比べ有意に低下していた。なかでも急性冠症候群のサリューシンαが最も低下しており、冠動脈閉塞病変の重症化につれ更に低下していた。また本態性高血圧患者では血清サリューシンα濃度は健常者より低く、頸動脈硬化の進展とともに更に低下していた。 以上より、新規血管作動性物質が高血圧における動脈硬化進展の制御に関与していることが示唆され、動脈硬化性疾患のバイオマーカーとしての可能性も期待できる。
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