研究概要 |
私たちは,初年度,2種類の合成HDL[ホスファチジルコリン(POPC)/Apolipoprotein(Apo)-AI]とPOPC/SIP(スフィンゴシン-リン酸)/Apo-AIの作製に成功し,さらに,SIPや合成HDLの多面的作用をIn vitroにおいて証明した。本年度は,この合成HDLのin vivoにおける効果を検討するために合成HDLの再潅流不整脈モデルにおける不整脈抑制効果や心筋梗塞後の心リモデリング抑制効果について検討した。ラット心筋虚血再潅流不整脈モデルでは,合成HDLを左冠動脈結紮前に投与した。結紮後再潅流を実施し,心電図記録を行った。結果は,合成HDL投与群において非投与群に比し心室細動や心室頻拍の持続時間が有意に抑制されていた。また,NO(nitric oxide)合成阻害薬のL-NAMEの併用投与により合成HDLの効果が抑制された。さらに,合成HDL投与群では,血中NO(nitric oxide)濃度が非投与群に比し有意に増加していた。ラット心筋梗塞モデルでは,心筋梗塞作成後,週1回,4週間に渡って合成HDLを投与した。心臓エコー検査では,合成HDL投与群では,非投与群に比し梗塞後の左室駆出率が有意に改善し,左室拡張末期径も小さいことが確認された。また,合成HDL投与群では,非投与群に比し左室の線維化面積も有意に減少していた。以上より,ラットモデルにおいて合成HDL治療の有用性が証明された。
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