研究課題
私たちは、この2年間で合成HDLの内皮管腔形成促進作用、心リモデリング抑制(ラット心筋梗塞モデル)、致死的不整脈抑制(ラット冠動脈再潅流不整脈モデル)などの多面的効果を報告してきた。合成HDLの有用性は疑う余地のないものであるが、私たちの使用した合成HDLは、アポ蛋白(A-I)とフォスファチジルコリン(POPC)を含有し(POPC/A-I)、特にA-Iは、Full length (267アミノ酸)であるため、その精製が難しく、一度に大量生産できず、静脈内投与のみしかできないという欠点を持ち、臨床治験には問題を残している。本年度は、既存のペプチド型HDLであるD4FおよびETC642の動脈硬化抑制作用について細胞実験(コレステロール引き抜き作用)と遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギを用いて検討した。D4FおよびETC642の引き抜き作用は、従来私たちが使用してきた合成HDLのように強力であった。さらに、WHHLウサギ(月齢7-15ヶ月)をETC642(低用量と高用量)投与群(12週間)と非投与群に分類し検討した。血管内超音波によるプラークの評価は、左鎖骨下動脈を指標にして薬剤投与前後で胸部大動脈の同一部位で計測した(左鎖骨下動脈から1-4cm離れた合計3cmの範囲のプラーク体積を計測)。大動脈プラークは、非投与群に比し、高用量投与群において有意にプラーク体積の変化率が低率であり、プラークの進展を抑制していた。以上より、従来型のペプチド型HDLの有用性が確認された。
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