本年度は、BMP-3bの心臓における機能解析のため、以下に記す3種の解析系を構築し、主に遺伝子発現調節の検討を行った。 (1)培養細胞系での検討のため、新生仔心臓より調製した初代培養細胞における発現を調べた。BMP-3b遺伝子は、心筋細胞及び非心筋細胞ともに発現していた。(2)本因子は、初期発生に重要な因子であることから、心臓の発生過程における発現を検討した(E8.5d〜10.5d)。その結果、8.5dから発現し、10.dでその量は増加していた。(3)in vivoでの機能解析のため、心臓で過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、10〜100倍レベルで過剰に発現するマウスの取得に成功した。本格的な検討はこれから開始することになるが、BMP3bが心臓において発生段階から出生後にいたるまで、重要な働きをしていることを強く示唆している結果である。 血管における解析は、昨年より継続して培養ヒト血管平滑筋細胞における検討を行っているが、BMP-3b遺伝子発現調節解析の過程で、新しいスプライシングバリアントを発見した。配列解析の結果から、本因子活性に必須な領域が欠損しているタイプであることから、活性調節に関与する重要なバリアントであり、新しい分子型の存在が予想される。今後、全長のクローニングを行い、新規分子型の機能解析や生体内分布を遺伝子レベル、タンパク質レベルで明らかにし、新たな機能解明への手がかりとしたい。
|