レジオネラ菌(Legionella pneumophila)は細胞内寄生性を特徴とするグラム陰性桿菌で、集中治療室管理が必要な重症肺炎の起炎菌として、しばしば臨床的問題となっている。しかし、レジオネラ菌が、外来抗菌薬治療が可能な軽症肺炎の起炎菌となることは少なく、『なぜレジオネラ肺炎が重症化しやすいのか』はよくわかっていない。そこで当該研究課題では、レジオネラ肺炎が重症化しやすい要因として、レジオネラ菌による細胞傷害作用に着目し、トランスポゾンを用いてレジオネラ菌の無作為遺伝子変異株を作製することによって、この分子機構の解明を目指すものである。 研究初年度にあたる本年度は、レジオネラ菌の無作為遺伝子変異株を作製する目的で、Tn903由来のプラスミドpLAW330と、mini-Tn10由来のプラスミドpCDP05の大量調製をアルカリ法で行った。次に、レジオネラ菌のコンピーテント細胞を作製し、pLAW330とpCDP05をそれぞれエレクトロポレーション法で遺伝子導入した(エレクトロポレーション法の条件は、http//wwwbio-rad.com/webmaster/pdfs/New_Gene_Pulser.pdfを参照)。pLAW330やpCDP05を遣伝子導入したレジオネラ菌を25μg/mlのカナマイシン含有BCYEプレートで選択培養したところ、いずれのプラスミドを導入しても多数の変異株が得られた。現在、作製したレジオネラ菌の無作為遺伝子変異株から、その細胞傷害性を指標に、スクリーニングを行う準備を進めている。そして、細胞傷害作用を失ったレジオネラ菌遺伝子変異株を選択できた場合には、変異遺伝子の同定を行い、その回復実験を行う予定である。
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