レジオネラ菌(Legionella pneumophila)は細胞内寄生性を特徴とするグラム陰性桿菌で、集中治療室管理が必要な重症肺炎の起炎菌として、しばしば臨床的問題となっている。しかしレジオネラ菌が、外来抗菌薬治療が可能な軽症肺炎の起炎菌となることは少なく、『なぜレジオネラ肺炎が重症化しやすいのか』はよくわかっていない。そこで当該研究課題では、レジオネラ肺炎が重症化しやすい要因として、レジオネラ菌による細胞傷害作用に着目し、トランスポゾンを用いてレジオネラ菌の無作為遺伝子変異株を作製することによって、この分子機構の解明を目指すものである。 研究二年度にあたる本年度は、初年度に選択した11株のレジオネラ菌遺伝子変異株において継代により薬剤耐性遺伝子が脱落しないことと、ベクター全体ではなくトランスポゾン部分のみの挿入であることをまず確認した。さらに、これらの遺伝子変異株からDNAを抽出し、トランスポゾン周囲の塩基配列を決定することによって、トランスポゾンの挿入によって変異した遺伝子の同定を進めた。今後、これらのレジオネラ菌遺伝子変異株に正常型遺伝子を導入することによって、形質が回復するかどうかを検討する予定である。
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