研究概要 |
1 klotho遺伝子欠損マウスの肺気腫形成過程における遺伝子発現変化の解析 klotho遺伝子欠損マウスは、肺気腫形成がみられるとともに肺胞壁の石灰化を来たすことが明らかとなっている。石灰化は肺胞壁のみならず、大動脈(メンケベルク型の動脈石灰化)をはじめ多臓器に認められる。このことから、本マウスの病態形成には石灰化のプロセスが重要であると考え、大動脈を用いてその分子メカニズムを解析した。 従来、血管の石灰化は血管細胞の変性に伴って二次的にカルシウム沈着がおこると考えられていたが、血管石灰化の進展には骨分化に類似した分子機序が働いている可能性が提示されている。中でも、骨分化に必須の転写因子であるCbfa-1の関与が注目されている。そこで、klothoマウスの大動脈を免疫組織学的に検討したところ、中膜の石灰化部位に隣接してCbfa-1陽性細胞の存在が確認された。また、RT-PCR法にて、Cbfa-1,osteopontin, osteonectin等の骨芽細胞マーカー遺伝子の発現を認めた。 以上の結果から、klothoマウスでみられる石灰化は受動的に生じるものではなく、能動的なプロセスによる変化であることが明らかになった。 2 klotho 遺伝子ヘテロ欠損マウスを用いた喫煙肺気腫モデルの作製 klotho 遺伝子ヘテロ欠損マウスは、タバコ主流煙曝露により肺気腫を発症する。しかし、曝露の条件によって、形成される肺気腫の程度にはばらつきがみられていた。 そこで、今後予定されている、「本マウスを喫煙肺気腫モデルとして用いた薬剤の治療効果実験」の予備実験として、タバコ主流煙曝露の条件を設定した。これにより均一な肺気腫が形成されることを確認した。
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