研究課題/領域番号 |
18590843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
久保 惠嗣 信州大学, 医学部, 教授 (80143965)
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研究分担者 |
藤本 圭作 信州大学, 医学部, 助教授 (70242691)
太田 正穂 信州大学, 医学部, 講師 (50115333)
花岡 正幸 信州大学, 医学部, 講師 (20334899)
漆畑 一寿 信州大学, 医学部附属病院, 助手 (60362125)
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キーワード | 遺伝子多型 / 呼吸機能 / 肺気腫 / 肺循環 / 慢性閉塞性肺疾患 / TGF-β1 |
研究概要 |
1、肺気腫の発症におけるtransforming growth factor beta 1(TGF-β1)遺伝子多型の関連 TGF-β1は、種々の細胞の増殖・分化、細胞外マトリックス産生、アポトーシス、さらに免疫機能に関与するサイトカインで、肺実質における肺気腫性変化と、気道におけるリモデリングの双方に関与している可能性がある。今年度、COPDの中で肺気腫に注目し、70名の肺気腫患者と99名の喫煙歴のある健常者との間で、TGF-β1遺伝子に存在する一塩基多型(SNPs)の頻度を比較検討した。8つのSNPs(rs2241712、rs1982072、rs1800469、rs1982073、rs2241716、rs4803455、rs6957、rs2241718)について、TaqManプローブとリアルタイムPCRシステムを用いてタイピングを行った。その結果、年齢、性別および喫煙歴の補正により、肺気腫とrs6957およびrs2241718との間に有意な相関を認めた。ハプロタイプの解析では、haplotype3の頻度について肺気腫群と対照群との間で有意な差を認めた。さらに、肺気腫群の呼吸機能データにおいて、気管支拡張薬吸入後の予測1秒量とrs1800469およびrs1982073との間に有意な相関を認めた。以上から、日本人における肺気腫の発症にTGF-β1遺伝子が関与する可能性が示唆された。 2、肺線維症合併肺気腫の臨床的特徴 喫煙暴露は肺に気腫病変だけでなく線維化も引き起こすことが示唆されているが、両者が併存している症例を散見する。胸部CT検査にて両側肺野に明らかな線維化と肺気腫を認める25名の肺線維症合併肺気腫症例と、気腫性変化を認めるものの肺線維症の所見を認めない安定期のCOPD患者90名とを比較した。肺線維症合併肺気腫の全例が男性であり、傍隔壁型肺気腫が有意に多かった。肺癌の合併が極めて多く半数以上の症例で認められ、肺線維症の所見は全例下肺野優位であった。呼吸機能では過膨張の程度は軽く、肺拡散能力の低下が顕著であった。以上より、肺線維症合併肺気腫患者は、線維化を伴わない肺気腫COPD患者とは異なった臨床的特徴を有し、特に肺癌の合併には注意を払うべきと考えられた。
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