肺腺癌とその前癌病変と考えられている異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia:AAH)におけるepidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異の解析を行った。【方法】外科的に切除された34例(3重複癌1例、2重複癌4例、肺腺癌とAAHの合併4例)より腺癌31検体およびAAH9検体が得られ、EGFR遺伝子Exon18-21のnested PCRを行い、direct sequence法にて解析を行った。【結果】腺癌ではExon19の欠失が3検体、Exon21の点突然変異が4検体の計7検体(23%)に存在した。AAHではExon19の欠失が4検体(44%)に認められた。多発肺腺癌の5例中2例ではいずれの病変にも変異は認められなかったが、2例では1病変のみに変異が認められ、1例では2病変の変異部位は異なっていた。AAHを伴う腺癌4例中2例ではいずれも変異は認められなかったが、1例では同一変異を有し、1例ではAAHのみに変異が認められた。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるgefitinibに耐性となる遺伝子であるExon20のT790Mの点突然変異がAAH1例と腺癌1例に認められたが、これらはgefitinibの使用歴はなかった。また、T790M変異を有しているAAHは腺癌も合併した症例であるが、この腺癌には同じくgefitinib耐性遺伝子と考えられているExon19のD761Y変異が認められた。【結論】同一症例でも肺腺癌の発癌機構には差があることが示唆された。gefitinib使用歴がなくても、発癌初期から耐性遺伝子が存在することが証明された。
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