研究課題
肺腺癌の細気管支肺胞上皮型においては、異型腺腫様過形成から腫瘍内に線維化巣を認めない野口のA型、肺胞虚脱型の線維化を認めるB型、そして腫瘍内に活動性線維芽細胞の増生を認めるC型への進展が明らかにされ、その進展とともに胸部CT上のすりガラス陰影の内部に充実性部分が広がっていくことが確認されている。本年度の研究として、すりガラス陰影を伴う肺腺癌進展の分子生物学的機序を上皮性成長因子受容体(EGFR)シグナルを中心に検討した。胸部CT上周囲にすりガラス陰影を伴い中心部に充実性部分をもつ肺腺癌の手術標本30例を用いて、中心の充実性部分、肺胞置換部分、辺縁の正常部分に分けてEGFRおよびSTAT3蛋白の発現(免疫組織染色)とexon19のdeletionおよびexon21のL858RのEGFR遺伝子変異(PCR法)を解析した。結果は、臨床検体の中心の充実性部分、肺胞置換部分、辺縁の正常部分における発現は、それぞれEGFRで30%、14%、0%、pSTAT3で26%、84%、30%に認められた。EGFR遺伝子変異は、L858Rが7例、deletionが4例に検出されたが、EGFRとの相関は認められなかった。pSTAT3の特に強い発現が認められた2例は、いずれもEGFR遺伝子変異陽性であった。以上より、すりガラス陰影を伴う肺腺癌の進展において、STAT3の発現が関与している可能性が示唆された。
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日本胸部臨床 68
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J Thorac Oncol 3
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