研究概要 |
塵肺に高率に肺癌が合併することは既に多く報告されているが、肺野に多彩な画像所見を有する塵肺患者において新たに出現した肺癌を検出することは現代の画像診断技術を用いても比較的困難な場合がある。肺癌細胞では癌化の早期よりMGMT,p16^<INK4A>,RASSF1A,DAPK,RAR-βなどの遺伝子のプロモーター部位にメチル化が生じることが知られており、これらがごく早期から末梢血中に遊離DNAとして検出できることを利用し血清メチル化DNAによる肺癌診断感度の上昇が期待される。本研究では当施設および関連施設において塵肺患者と塵肺肺癌患者の血清中遊離メチル化DNAの出現率を前向きに比較検討することにより、塵肺肺癌の診断への応用可能性を明らかにすべく本研究を開始した。平成18年度は主として塵肺、および塵肺肺癌(目標症例各70例)の症例集積を行い、現時点までに塵肺症例69例、塵肺肺癌症例9例を集積し、これらの血清中遊離DNAのメチル化について解析を行っている。塵肺症例および塵肺肺癌症例の年齢中央値は71歳vs72歳、珪粉暴露期間は35年vs33年であり、肺癌を有しない塵肺症例69例中19例(27.5%)に前述の5遺伝子の少なくともいずれかひとつにメチル化を認めたのに対し、塵肺肺癌症例では9例中7例(77.8%)に少なくともいずれかひとつの遺伝子のメチル化を認めた(p=0.0003)。肺癌合併塵肺では有為にメチル化の頻度が高く、診断的価値があるものと考えられた。次年度はさらに症例を集積して解析を行う。
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