研究概要 |
研究計画に沿って、HM1.24抗原ペプチドによる細胞障害性T細胞(CTL)の誘導を試みた。新規ペプチドも含めてCTL誘導能を検討した結果、以前に我々が同定したHM1.24-165ペプチドのCTL誘導効果が最も高いことが明らかとなった。一方、マウスーヒトキメラおよびヒト化抗HM1.24抗体による抗体依存性細胞障害活性(ADCC)および補体依存性細胞障害活性(CDC)について検討した。エフェクター細胞としてヒト末梢血単核球(MNC)を用いた検討では、キメラ抗体およびヒト化抗体ともに、マウス抗体で見られたADCC活性に比較し、強力な細胞障害活性を示した。ヒト化抗体に比較してキメラ抗体がより強くADCCを誘導した。一方、これらのADCCはリンパ球(NK細胞)によって誘導されており、単球によるADCC活性は非常に低かった。また、肺癌細胞表面に発現するHM1.24抗原量とADCC活性の間には正の相関関係を認めた。ヒト末梢血リンパ球を、インターロイキン(IL)-2、IL-12,IL-15で培養することによってADCC活性の増強を認めた。さらに、肺癌細胞を、インターフェロン(IFN)-β、-γで処理することにより、HM1.24抗原発現量の増加とともにADCC活性の増強が観察された。 一方、肺癌患者末梢血MNCを用いて抗HM1.24抗体によるADCC活性を検討した結果、肺癌患者MNCにおいても、健常人と同等のADCC誘導能が観察された。IL-12あるいはIL-15によるMNCの培養によって、ADCCの増強を認めた。特にADCCの低い例では、IL-12およびIL-15による活性増強が著明であった。 以上の結果から、マウスーヒトキメラおよびヒト化抗HM1.24抗体の肺癌治療への応用の可能性が示唆された。また、ワクチン療法としての展開には、HM1.24-165ペプチドが有効であることが再確認された。
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