薬剤誘導プロモーターを用いた制限増殖型ウィルスの作成とプロモーターフィデリティの検証: E1およびE3領域を除去した非増殖型アデノウィルスにテトラサイクリン誘導プロモーターの制御下にE1A遺伝子を発現するカセットを組み替えて制限増殖型アデノウィルスを作成した(AdTRE-E1)。ヒト線維芽細胞WI38にAdTRE-E1およびTRE結合蛋白発現アデノウィルス(AdTREBP)を共感染させ、培地にテトラサイクリンを添加後に細胞内におけるE1A遺伝子コピー数をTaqman PCR法によって定量化した。その結果、テトラサイクリン非存在下では増加がみられなかったが、添加後72時間で10^4倍の増加を認め、プロモーターの活性化を確認した。 AdTRE-E1による細胞障害性の確認 WI38細胞にAdTRE-E1およびAdTREBPを共感染させ、テトラサイクリンの添加による殺細胞効果をMTSアッセイおよびクリスタルバイオレットアッセイによって定量化した。その結果、テトラサイクリンの添加のタイミングに依存して殺細胞効果が認められた。また培地中の感染ウィルス粒子数も10^3倍の増加を認めた。 癌治療用ウイルスの搬送 テロメラーゼプロモーターを利用した癌治療用制限増殖型ウィルス(AdhTERT-E1)をAdTRE-E1およびAdTREBPとWI38細胞に共感染させ、テトラサイクリンを添加したところ3種のウィルスはいずれも増殖し、WI38細胞を破壊して培地中に放出された。培地の一部を肺癌細胞株H157細胞の培地に添加したところ、同細胞に明らかな殺細胞効果が確認された。この殺細胞効果はテトラサイクリンの非存在下でも観察され、AdhTERT-E1の自律的増殖による効果と考えられた。
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