昨年度の研究により、テトラサイクリン誘導プロモーターを使用した制限増殖型アデノウィルスを作成し、in vitro実験系において同プロモーターが機能することを確認した。今年度は同ウィルスがin vivoにおいても同様に機能し、ウィルスの増殖を誘導できるかどうかについて検討を行った。 動物モデルとしてヌードマウス腹腔内にウィルスを感染させたヒト線維芽細胞由来のWI38細胞を移植した。WI38細胞には移植前にAdTRE-E1およびテトラサイクリンプロモーター結合蛋白発現ウィルスを共感染させた。マウスをA、Bの2群にわけ、B群では飲み水内にテトラサイクリンを混入した。移植後1週間の飼育の後に、マウス腹腔をPBSで洗浄し、同洗浄液中のウィルス量を定量化した。 テトラサイクリン非投与群(A群)では腹腔内のウィルス量はウィルス非感染コントロールに比べて有意なウィルス量の増加はみられなかった。一方、B群では経時的にウィルス量は増加し、1週間後にはA群に比べて約100倍量のウィルス量の増加が観察された。また、組織学的には移植した線維芽細胞量は減少していた。 テトラサイクリン誘導プロモーターを使用した制限増殖型アデノウィルスはin vivoにおいてもテトラサイクリンの投与によって同プロモーターの活性化およびウィルス増殖を制御することが可能であった。ウィルスの増殖はテトラサイクリン投与の時期に依存しており、増殖タイミングについても制御が可能であった。同ウィルスを治療用アデノウィルスと共感染させることで正常細胞をウィルスベクターの担体として使用できる可能性が示唆された。
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