テトラサイクリン誘導プロモーターを用いた制限増殖型アデノウィルス(AdTRE-E1)を作成した。同ウィルスとテトラサイクリンプロモーター結合蛋白(TREBP)が共存する条件下で、テトラサイクリンを培地中に添加するとプロモーターが活性化され、同ウィルスの増殖を認めた。よって上記のシステムを用いることにより、テトラサイクリン添加の有無でウィルス増殖のタイミングを任意に制御することが可能となった。また、同プロモーターはテトラサイクリン非存在下では活性化されないことからヒト線維芽培養細胞内で安定的に存在した。次のステップとして上記システムに治療用の制限増殖型アデノウィルス、テロメラーゼプロモーター依存性アデノウィルス(AdTERT-E1)を併用し、ヒト線維芽培養細胞をウィルス担体として用いる方法を検討した。同細胞に上記システムを導入した上で、さらにAdTERT-E1を共感染させたところ、テトラサイクリンの非存在下では細胞障害性を認めなかった。しかし、一旦テトラサイクリンを培地中に添加すると、AdTRE-E1ウィルスだけでなく治療用ウィルス、AdTERT-E1も同様に増殖した。添加後72時間の経過で細胞障害性を認め、担体であるヒト線維芽培養細胞を破壊して、ウィルスは培地中に放出された。ウィルスを含む培地の一部をヒト肺癌細胞培養シャーレに添加すると、テトラサイクリン非存在下においても治療用ウィルスの自律的増殖が認められ、肺癌細胞への細胞障害性を発揮した。このシステムはヌードマウス腹腔内に移植した状態でも同様に機能し、飲水内にテトラサイクリンを混入しておくことで、腹腔内におけるAdTRE-E1の増加が観察された。以上の結果から、上記のシステムはin vivoにおいても機能しておりウィルス担体として使用できる可能性が示唆された。
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