昨年度に引き続き、本年度もCOPD患者および健常者(呼吸機能正常喫煙者、非喫煙者)の末梢血好中球におけるPPARγの蛋白発現について、Western blotting法により測定を行った。その結果、COPD患者の末梢血好中球では、健常者に比べ有意にPPARγの蛋白発現が亢進していた(COPD=1532.5、HS=708.9、p<0.0001)。背景因子との関連では、PPARγの蛋白発現量と年齢との間に有意な相関が認められたが、喫煙量やbody mass indexとの相関は認められなかった。呼吸機能との関連では、PPARγの蛋白発現の程度は、気道の閉塞性障害の指標である%FEV_1と有意な逆相関を示し(r=-0.548、p<0.0001)、さらに肺容量の指標である%FVCと有意な逆相関を認めた(r=-0.416、p<0.0001)。以上の結果から、好中球中のPPARγはCOPDの進展に関与する可能性が考えられた。PPARγは主として脂肪細胞に高発現しており、脂質代謝や糖代謝に関与することが知られているが、最近の検討で、PPARγの外因性リガンドが気道の炎症やリモデリングを抑制することが報告されている。従って、PPARγの発現増強は気道の炎症を抑制性に制御し、COPDの進展を抑制する可能性が考えられるが、今回の検討結果からは逆にCOPD患者の末梢血好中球においてPPARγの蛋白発現が増強しており、COPDの気道炎症に伴い防御的な反応として発現が増強して可能性、あるいはPPARγ自体の機能に何らかの変異が存在する可能性などが考えられ、今後のさらなる検討により、疾患のバイオマーカーや新たな治療ターゲットとしてのPPARγの意義を明らかにしうる可能性が示された。
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