造血幹/前駆細胞を用いた様々な臓器再生が報告されており、将来の新たな治療法として期待されている。本研究では、顆粒球コロニー刺激因子G-CSF(granurocyte colony stimulating factor)とエリスロポエチンを用いて、骨髄中の幹/前駆細胞を「動員(mobilization)」することで実験的肺障害が改善するかを検討した。マウスにおいては脾臓の摘出を行うことで、G-CSFによる骨髄幹細胞の動員が増強することが知れているため、C57/Blマウスから脾臓摘出術を行い、手術の影響がないかを検討した。肺障害としてブレオマイシンの経静脈投与による肺臓炎モデルを用いた。摘脾マウスにおいてもブレオマイシンにより肺臓炎が誘導され、気管支肺胞洗浄や肺組織所見などからはコントロールマウスと同様の障害が認められた。ブレオマイシン投与後、day0からG-CSFとエリスロポエチンを5日間連日で皮下注射を行って骨髄幹細胞の動員を誘導した。day21または28に気管支肺胞洗浄、肺組織の摘出を行った。気管支肺胞洗浄液の解析ではコントロールマウス、摘脾マウスと比較して好中球細胞比率の有意な減少を認めたが、肺組織の顕微鏡所見からは有意な改善は認められなかった。ブレオマイシンの経気管投与による急性肺障害モデルにおいても検討を行ったが、肺障害の改善は得られなかった。
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