1. アクチニン4のアクチン結合ドメインと相互作用する分子について 大腸菌two-hybrid法でヒト腎cDNAライブラリーをスクリーニングした結果、アクチニン4のアクチン結合ドメインと相互作用する分子R(種々の情報伝達系分子との相互作用が知られている)を同定している。両者の相互作用について、in vitroおよびin vivoでの実験系で情報伝達系作動分子の添加の有無による影響の解析を継続している。微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)での分子Rの局在変化の検討も加え、論文を投稿予定である。 2. MCNSでの糸球体濾過バリアー機能破綻分子について MCNSの発症に糸球体濾過バリアー構成分子の機能を破綻させる液性因子の関与が想定されており、末梢血単核球との関連性が示唆されている。この因子の同定の手掛かりを得る目的で、MCNS症例での末梢血単核球Th1/Th2サイトカイン不均衡についても検討した。Th1特異的転写因子T-bet、Th1サイトカインIFN-γ、Th2特異的転写因子GATA-3、Th2サイトカインIL-13などのmRNAの発現をreal-timePCRで定量化した。GATA-3とIL-13のmRNAがMCNS症例のネフローゼ期で寛解期に比して有意に高発現しており、これらの高発現は膜性腎症のネフローゼ期および健常人と比しても有意であった。一方、T-betとIFN-γのmRNAの発現量は各グループ間で有意差を認めなかった。以上より、MCNSの発症にTh2サイトカインの優位性が重要であり、糸球体濾過バリアー構成分子の機能を破綻させる液性因子を検索する上で示唆を与える成果である(Clinical Nephrologvに掲載が受理された)。
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