研究課題
基盤研究(C)
ミトコンドリア遺伝子の4698bp欠失を導入したマウス(mito-mouse)は、その変異遺伝子含有量が増加すると巣状糸球体硬化病変と同時に腎不全により死亡することが明らかとなっている.このミトコンドリアDNAの大規模欠失変異マウスでは、巣状糸球体硬化病変形成前に、大量の蛋白尿を呈するようになり、その後FGS病変が形成さることが明らかとなった。そこで本研究ではこのミトコンドリアDNA欠失変異を導入したマウスを使用して、糸球体上皮細胞におけるスリット膜分子のmRNAレベルならびに蛋白レベルの量的、質的異常を検討し、、その後のFGS病変形成時における上記変化と個体の持つミトコンドリアDNA変異量との関係を検討した。変異ミトコンドリアDNAが70%以上のマウスでは、生後18週より尿タンパクが増加し、20週でピークとなり、22週で死亡した。変異ミトコンドリアDNAが50-69%のマウスでは生後20週より尿タンパクを認め、その後徐々に尿タンパクは増加するものの、28週まで生存した。変異ミトコンドリアDNAが10-49%のマウスでは28週目でわずかに蛋白尿の出現を認めた。変異ミトコンドリアDNAが70%以上のマウスでは、20週以降に巣状糸球体硬化病変を認めるようになり、その後硬化糸球体の比率が増加した。電子顕微鏡上も広範な足突起の広範なeffacementに加え、糸球体上皮細胞内に異常ミトコンドリアを認める。このような糸球体においては、糸球体上皮細胞蛋白であるネフリン、ポドシンは18週以降で係蹄壁に顆粒状に分布するようになり、両蛋白の糸球体内の発現量は、蛋白尿ピーク時には増加し、両蛋白のmRNA発現は、蛋白発現のピーク後に最大量を認めるものの、その後蛋白、mRNAとも産生が低下した。以上の結果から、腎での異常ミトコンドリアの集積するmito-mouceは異常ミトコンドリアが70%以上となると、スリット膜蛋白の産生が保たれた状況で大量の蛋白尿を呈し、その後の糸球体上皮細胞の脱落により巣状糸球体硬化症を呈する。以上から蛋白尿出現時において、ミトコンドリア機能異常の関与が示された。
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