研究概要 |
本研究の目的は、内在する成体腎幹細胞を同定してその増殖・分化様式を明らかにすることにより、腎再生療法へ応用しようとするものである。組織幹細胞には「分裂速度が非常に遅い」という特徴があり,これは細胞分裂の際に起こりうるDNA変異を最小限にするための仕組みと考えられている。このような細胞,いわゆるSlow-Cycling Cell(SCC)は何らかの組織障害時に活性化され,急速に増殖した後,分化して組織の修復・再生を担うものと考えられる。近年このSCCが各組織で同定されつつあり,組織に内在する幹細胞候補として注目されている。最近我々は成体腎にもSCCが存在することを報告した(Am Soc Nephrol 14:3138-46,2003)。そこで本研究では,まずこのSCCの分離・培養法の確立を目指すとともに,SCCに特異的なマーカーの探索,活性化因子の同定を試み,最終的にはその増殖・分化様式を明らかにしたいと考えている。その目的を達成するために,昨年度は,SCCをHoechst33342(DNA結合蛍光色素)とFluorescent Activated Cell Sorter(FACS)を利用して選択的に分離する方法により,SCCの純度を90%近くに上げることに成功した。この純化したSCCは,コラーゲンの三次元培養条件において管腔構造を形成し,ラットの胎児腎に移植すると尿細管に組み込まれて分化することを明らかにした。さらに今年度は,SCCの数が加齢に伴い減少することを示し,老化による腎の再生能力の衰えのメカニズムを明らかにした。
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