研究課題
基盤研究(C)
慢性腎疾患では、障害進展因子に対する防御機構が破綻して腎機能の悪化が進む。内皮前駆細胞は防御因子として働いている。心血管病患者では流血中の血管内皮前駆細胞数が減少しその機能が低下していることが知られている。本研究で我々は、心血管病の進行に関連の深いアルドステロンが血管内皮前駆細胞の生成を障害することが明らかにした(Hypertension 2006)。アルドステロンの抑制作用は酸化的ストレスを介しているため、抗アルドステロン薬に加え抗酸化剤が内皮前駆細胞保護に有効であることが明らかになった。さらに我々は、腎臓に存在する体制幹細胞様の性質をもつside population(SP)細胞について検討を加えた。SP細胞は内皮細胞への分化能力も持つ。我々は、アンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害薬バルサルタンが腎臓SP細胞を保護することを明らかにした。この結果はアンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害は腎臓SP細胞を保護することにより腎臓修復機転を促進させることが示唆している(Eur J Pharmacol 2007)。つぎに、エピジェネティックスを調節することにより腎臓修復が可能か検討を加えた。まず、虚血後の腎修復にヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の抑制が関与することを明らかにした(J Am Soc Nephrol 2008)。これを治療に生かすため、エピジェネティック制御薬であるHDAC阻害薬の作用を検討した。その結果HDAC阻害薬が培養尿細管細胞の線維化を抑制し(J Am Soc Nephrol 2007)、慢性腎炎の進展を抑制することが明らかになった(Stem Cells 2007)。以上からHDACは新たな腎治療創薬ターゲットとなることが判明した。
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