偽性低アルドステロン症typeII (Gordon症候群、PHAII)は高血圧、高カリウム血症、高クロール性アシドーシスを主症状とする常染色体優性の遺伝性疾患である。近年、この疾患の原因遺伝子として、WNK1とWNK4遺伝子が同定された。WNKはserine-threonine protein kinaseの一種であるが、その生理的機能はいまだ不明であった。平成18年度に我々は、疾患起因性WNK4変異タンパクをノックインしたマウスを作製するにことに成功し、今年度その形質を解析した。ノックインマウスは高血圧、高カリウム血症、代謝性アシドーシスを呈しPHAIIの形質を発現していることを確認した。すなわちPHAII疾患モデルマウスの作製に成功した。このマウスにおいて腎臓遠位尿細管におけるNa-Cl共輸送体(NCC)の発現とリン酸化が亢進していた。さらに、このマウスにおいて二つのキナーゼOSR1とSPAK1のリン酸化の亢進も見られた。これらのことからPHAIIの病因は変異WNK4によるOSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系の亢進による塩分再吸収増加であると考えられた。これらの成果はCell Metab. 2007;5:331-44において報告した。現在さらにノックインマウスの解析を続行中で、PHAII分子病態、およびOSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系の詳細につき検討中である。
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