偽性低アルドステロン症typeII (Gordon症候群、PHAII) は高血圧、高カリウム血症、高クロール性アシドーシスを主症状とするの遺伝性疾患で、近年、その原因遺伝子として、WNK1とWNK4が同定された。平成19年度に我々は、疾患起因性WNK4変異タンパクをノックインしたPHAII疾患モデルマウス作製に成功し、PHAIIの病因は変異WNK4によるOSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系の亢進による塩分再吸収増加であるとことを示した。本年度においては引き続きWNK4-OSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系の生理的意義につき検討した。野生型マウスに低塩分食を投与したところ、OSR1/SPAK-NCCのリン酸化は亢進し、この変化はスピロノラクトン投与にて消失した。逆に高塩分食投与ではOSR1/SPAK-NCCのリン酸化は抑制され、この変化はアルドステロン投与にて消失した。このことからWNK4-OSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系はアルドステロンの下流にある新規のeffector系であることが示唆された。これらの成果はKidney Int. 2008; 74: 1403-09において報告した。さらにWNK4ノックアウトマウスを作製して解析を行い、この系におけるWNK4の役割を解明し、現在投稿中である。またWNKの活性化の機序についても培養細胞を用いて検討し、WNKが細胞外液のクロライド濃度により活性が変化することを見いだした。このことから、腎臓において、WNK4-OSR1/SPAK-NCCリン酸化シグナル伝達系が遠位尿細管管腔内のクロライド濃度を感知している可能性が示唆された。この結果については現在投稿準備中である。このようにWNK4を中心とした新規血圧調節系の実態につき、多くの注目すべき成果が得られ、現在も研究が進行中である。
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