障害を受けた糸球体上皮細胞が糖鎖変異型ポドカリキシン(以下gm型ポドカリキシン)を発現するようになると同細胞の陰性荷電が減弱し、濾過間隙の消失やボウマン嚢上皮の癒着につながる可能性がある。癒着は不可逆性の腎機能障害進展のマーカーであることはすでに知られている。そこで糸球体上皮細胞障害時におけるポドカリキシンの糖鎖の変化と同細胞障害時に特異的な糖転移酵素の検出を検討した。 1.正常ラット糸球体および培養糸球体上皮細胞における糖転移酵素の検出 ラット糸球体由来培養細胞を順天堂大学栗原准教授より供与していただき、分化状態でのmRNAを抽出し、RT-PCR法により種々の糖転移酵素の検出を試みた。また、ラット糸球体を単離し、同じくRT-PCRを行った。今後、腎臓病モデルラットの糸球体を単離し、リアルタイムPCR法により、糖転移酵素の増減を検討する。 2.病的状態での糸球体上皮細胞におけるポドカリキシンの糖鎖構造の解析 正常および腎臓病モデルラットの糸球体を可溶化し、gm型ポドカリキシンを認識するL-セレクチン/IgGキメラ抗体による免疫沈降の条件を検討したが、非特異的な結合が多く、正常と腎臓病モデルとの違いは現時点では明かではない。更なる予備実験を行う予定である。 3.エズリンノックダウンマウスにおける糸球体上皮細胞機能の検討 ノックダウンマウスの供給元である京都大学月田早智子教授から、系統の維持が極めて困難な状況とのことで、同マウスを用いた実験は残念ながら検討できていない。
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