私たちは糸球体上皮由来培養細胞および腎臓病モデルラットを用いて糸球体上皮細胞障害時およびアンジオテンシンII(AII)刺激時におけるポドカリキシンの糖鎖の変化と同細胞障害時に特異的に発現する糖鎖付加酵素を検討することにした。 ラット糸球体上皮由来培養細胞3株(2DNA1D7、All-48、C7)を分化状態でのmRNAを抽出し、RT-PCR法により種々の糖鎖付加酵素の検出を試みた。最近糸球体上皮細胞特異的糖鎖付加酵素として見出されたglycoprotein-N-acetylgalactosamine-3-B-galactosyltransferase(C1Gal t 1)とUDP-GlcNAc2-epimerase(GNE)をRT-PCRで検出した。また、ラット糸球体を単離し、同じくRT-PCRを行い、両酵素のmRNA発現を確認した。新規バイオマテリアルであるハニカム膜を足場として上記3株を培養し、増殖期と分化期における特徴を、遺伝子発現と形態観察の両面から検討した。通常培養シャーレ上で、2DNA1D7ではpodocalyxin、nephrin、All-48ではnephrinの遺伝子発現が、増殖期に比べ分化期でより強い傾向が見られたが、形態の変化は認められなかった。ハニカム膜(7mm孔径)上において、All-48(分化期)ではpodocalyxin、CD2AP、nephrin、C1galt1、GNEの発現量が、通常培養シャーレ上に培養した場合に比較して高く、形態的には細かい突起が見られ重層化する傾向があった。 AII、AII拮抗薬添加の有無によりポドカリキシンと免疫共沈するアダプター蛋白(エズリン、NHERF2)の量を検討したところ、AII依存的にこれらの複合体が解離することが明らかとなった。AII刺激により、C1galt1、GNEの発現量は減少した。以上から新規バイオマテリアル上での培養やAII添加により糸球体上皮細胞において糖転移酵素の変化が生じ、ポドカリキシンの糖鎖が変異することで周囲細胞への癒着が起こることが示唆された。
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