研究概要 |
1)fibrocyteの腎間質線維化機序への関与とその治療標的としての可能性 腎間質線維化におけるfibrocyteの意義を,マウスー側尿管絃紫モデル(UUO)を用いて検討した.CD45/I型コラーゲン共陽性fibrocyteは皮髄境界領域を中心に陽性所見を認め,その陽性細胞数は線維化進展に伴い増加した.この細胞の多くはCCR7陽性であった.さらに皮髄境界領域を中心にCCR7リガンド(CCL21)/MECA79共陽性血管を認めた.一方,抗CCL21中和抗体を用いたCCL21/CCR7シグナリング阻害にて,CD45/I型コラーゲン共陽性fibrocyte浸潤の減少とともに間質線維化の改善を認めた.ヒト末梢血よりfibrocyteを分離採取し,CCL21,TGF-β刺激によるコラーゲン産生能を検討したところ,時間依存性にI型コラーゲン発現亢進を認めた. 2)各種ヒト腎疾患例におけるfibrocyteの意義 各種腎疾患115例(男性57例,女性58例,平均50.9才)を対象とした.Fibrocyteは間質を中心に浸潤を認めた.間質内fibrocyte陽性細胞数は,血清クレアチニン値と24時間クレアチニンクリアランス値に相関を認めた(各々r=0.34,p<0.01;r=-0.448,p<0.01).さらに各病理学的指標との関連においては,間質内fibrocyte陽性細胞数は間質線維化(r=0.41,p<0.01),間質内CD68陽性マクロファージ数(r=0.39,p<0.05)および尿中MCP-1値(r=0.527,p<0.05)と相関した.以上の結果より,fibrocyteはCCL21/CCR7シグナリングによる腎浸潤および活性化を介して腎間質線維化に関与し,かかる病態に対する新しい治療標的分子としての可能性が示された.
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