研究概要 |
腎線維化は進行性腎臓病の共通進展経路であり,その機序解明と治療戦略構築は重要な課題である。これまで,骨髄由来白血球系細胞,fibrocyteに着目し腎線維化における関与を検討してきた。一方,renin-angiotensin-aldosterone系(RAAS)は腎はじめ臓器線維化に深く関与することが判明している。そこで,腎線維化におけるRAASとfibrocytesの意義を検討した。 [対象と方法]8週齢雄性angiotensinll(AII)受容体type2欠損マウス(AT2k/o)および対照マウス(WT)に-側尿管結紮(UUO)モデルを作成した。なお,valsartan(VAL;20mg/kg/日)をUUO7日前より経口投与した。UUO5日目に屠殺し,腎組織,腎内RNAおよび骨髄を採取した。ヒト末梢血よりfibrocytesを採取し,AII刺激によるI型コラーゲン(Coll)mRNA発現を検討した。 [結果]UUO5日目において,免疫組織学的にCD45/ColI陽性fibrocytesの腎浸潤を認めた。浸潤fibrocyte数,腎線維化面積,腎内ColImRNA発現はAT2k/oにおいてWTに比し高値であり,VAL投与でいずれも減少した。骨髄中のCD45/Coll陽性fibrocytes数は,AT2k/oにおいてWTに比し高値であり,VAL投与でいずれも減少した。培養fibrocytesはAII刺激により時間依存性Co11mRNA発現を認めた。一方,VAL添加で発現は抑制され,PD123319(AT2 antagonist)添加では発現が充進した。 [まとめ]RAASは骨髄、腎におけるfibrocyte増殖、活性化調節を介して腎線維化に関与することが示唆された。これらの結果より,RAAS阻害薬の腎はじめ臓器線維化抑制効果の少なくとも一部は,fibrocyteの制御を介している可能性が示された。
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