研究概要 |
腎線維化は進行性腎臓病の共通進展経路であり、その機序解明と治療戦略構築は重要な課題である。本研究において、新規の骨髄由来白血球系細胞、fibrocyteに着目し腎線維化における関与を検討した。1)fibrocyteの腎間質線維化機序への関与とその治療標的としての可能性: 腎線維化におけるfibrocyteの意義をマウス一側尿管結紮モデル(UUO)を用いて検討した。CD45/I型コラーゲン共陽性fibrocyteは皮髄境界領域を中心に浸潤し線維化進展に伴い増加した。CCL21/CCR7阻害にて,CD45/I型コラーゲン二重陽性fibrocyte浸潤の減少とともに間質線維化の改善を認めた。2)各種ヒト腎臓病例におけるfibrocyteの意義:各種腎臓病115例において、fibrocyteは間質を中心に浸潤し、腎機能と負相関、線維化と正相関した。3)腎線維化におけるレニン・アンジオテンシン系(RAS)とfibrocyteの関連:UUOにおいて、浸潤fibrocyte数、腎線維化面積、腎内Co1ImRNA発現はangiotensinII(AII)受容体type2欠損マウス(AT2k/o)において対照マウスに比し高値であり、AT1阻害薬投与でいずれも減少した。骨髄中のfibrocytes数は、AT2k/oにおいて対照に比し高値であり、AT1阻害薬投与投与でいずれも減少した。(まとめ)fibrocyteはCCL21/CCR7シグナリングによる腎浸潤および活性化を介して腎線維化に関与する。さらにRASは骨髄・腎におけるfibrocyte増殖・活性化調節を介して腎線維化に関与することが示唆された。RAS阻害薬の腎はじめ臓器線維化抑制効果の少なくとも一部は、fibrocyteの制御を介している可能性が示された。
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