研究概要 |
1.マウスの腎虚血再灌流障害および一側尿管結紮による尿細管間質障害において、Neutrophil gelatinase-associated lipocalin (Ngal)のmRNAが腎ヘンレ上行脚及び肝臓において発現誘導され、産生された蛋白が血液中を循環し、糸球体濾過され、近位尿細管から再吸収され、endocytic vesiclesにNgal蛋白が集積することを明らかにし、腎臓から腎臓へと向かう分泌蛋白の新しい内分泌学的な代謝動態を解明した(Kuwabara T, Mori K, et. al.投稿中)。 2.小児の開心術後の急性腎不全において、尿中Ngal濃度が超早期に増加し、血清クレアチニン濃度の増加を予測できることを既に発表しているが(Lancet 2005)、成人の開心術においても同様の成績を得て、腎移植後の拒絶反応の早期に腎生検組織中のNgal蛋白の発現も増加することを明らかにした。さらに慢性腎臓病患者において、尿中Ngal濃度の高値は3ケ月以内の急性増悪の独立した危険因子となることを見出している。以上の成績から、Ngal発現は急性腎不全のみならず慢性腎不全急性増悪の早期、鋭敏なバイオマーカーとして極めて有用であることを明らかにした(Kidney Int 2007)。 3.これまでNgal: siderophore: Fe複合体が腎臓発生、腎保護、癌の再上皮化の作用を有することを明らかにしてきたが、今回Ngal: siderophoreが鉄キレート体として作用し細胞のアポトーシスを誘導することを報告した(J Immunol 2007)。
|