腎排泄不全時には、腎にて処理できないカルシウム・リンが、各組織で処理されることで異所性石灰化が発症すると考えられているが、その詳細は不明である。石灰化の調節には骨に存在するリンセンサーならびに、リンセンサーのシグナルをうけるリン取込分子(リンチャネル)が異所性石灰化とリン代謝調節を結ぶ重要な鍵となる。そこで本研究では、同定した破骨細胞のリンチャネル分子BVPiC85の解析、骨・血管内皮において高リンシグナルを感知するリンセンサー(PiSR)の同定し、生体内における役割と異所性石灰化の発症のメカニズムを明らかにすることを目的として行った。 マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を、分化誘導因子RANKL添加により破骨細胞を構築し、モデル細胞として、リンチャネル候補分子BVPiC85の特性と調節機構の詳細を検討した。リン特異的取り込み阻害剤、リン酸化阻害剤、GPCR阻害剤、カルシウム関連阻害剤を用いてPi uptake能を測定し、BVPiC85の制御には細胞内カルシウムが重要な役割を行うことが明らかとなった。また、破骨細胞には取り込んだリンを排出する分子が存在することを初めて明らかにし、また本機構は細胞内カルシウムを介して連動的に働くことを示した(業績1)。このように、破骨細胞には大量のリンを処理する機構が存在しており、本機構が生体内リン代謝調節、異所性石灰化に大きく寄与することを明らかにした。今後、本機構の詳細な解明と分子を中心とした解析を進めていく予定である。
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