研究概要 |
glycogen synthase kinase-3(GSK-3)は、glycogen synthaseをリン酸化しグリコーゲン産生を活性化する因子として発見されたが、その後、転写因子活性や蛋白合成の調節、細胞内骨格のremodelingなどの様々な細胞機能に重要な役割を演じていることが明らかになった。 本研究の目的は腎不全や各種糸球体腎炎モデルおよび培養細胞を用いて,GSK-3の糸球体腎炎の発症・進展に演じる役割を明らかにし、GSK-3の特異的抑制薬の治療への応用を検討することにある。 腎臓内におけるGSK-3の局在を検討したところ,微小単離法によって得られたラット腎臓糸球体を初めとする各ネフロンセグメントを用いたRT-PCR法によって,糸球体および近位尿細管をはじめとする尿細管に広く存在していることを確認した。また,GSK-3βに対する特異的な抗体を用いたwestern blotting法にて腎臓にもGSK-3β蛋白が存在し,免疫組織化学的検討では、糸球体での発現が認められ、足細胞のマーカーであるpodocinおよびsynaptopodinを用いた二重染色によって、GSK-3βの足細胞での存在を確認した。また、Ser-9がリン酸化された不活性なGSK-3βを特異的に認識する抗体を用いた検討では,活性型のGSK-3βと同じ細胞に存在することが明らかとなり,GSK-3βが細胞機能に何らかの作用をおよぼしていることが示唆された。 I型糖尿病モデルであるストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットを用いた検討によって、STZ投与後一週間の糸球体におけるGSK-3β蛋白がコントロールラットに比べて優位に増加する一方、不活性なGSK-3β蛋白の発現に差は見られなかったことから、リン酸化されていない活性型のGSK-3β蛋白が増加していることを確認した。これらの結果は糖尿病性腎症における足細胞の障害にGSK-3βが重要な役割を演じている可能性を強く示唆するものである
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