糖尿病性腎症における血管新生と血管内皮細胞の形質転換との関連について 【背景・目的】糖尿病性微小血管症の発症・進展には血管内皮細胞の形質転換が関与している。そこで、形質転換の指標として血管内皮細胞Plasmalemmal vesicle associated protein-1(PV1)の発現と糖尿病性腎症の糸球体病期との関連ついて検討した。 【方法】当科にて腎生検を施行し2型糖尿病性腎症と診断した93例のうち臨床病理所見が十分得られた22例を対象に、抗PV1抗体による免疫染色を行い、腎内におけるPV-1の発現を画像ソフトを用いて解析した。また、PAS染色にて糸球体糖尿病性変化の病期(GradeI〜GradeIII)を判定しPV1発現との関連を解析した。 【結果】解析しえた糸球体総数は58個で、GradeIが19個、GradeIが23個、GradeIIIが16個であった。PV1は血管極部の血管新生、メサンギウム領域内の毛細血管腔、糸球体係蹄に沿って陽性であった。一方、PV1陽性の血管極部血管新生は、GradeIを最大として、病期の進展とともに有意に減少した(pく0.01)。また、PV-1陽性の糸球体係蹄はGradeIとIIの間で有意な差を認めなった。 【結語】糖尿病性腎症では、血管極部血管新生、メサンギウム内の毛細血管腔、糸球体係蹄におけるPV-1発現が病初期から認められ、これらの血管内皮細胞では、カベオラ形成という内皮細胞の形質変化が生じている可能性が示唆された。現在、さらに、腎内PV-1の発現制御に関わる分子機構を解明している。なお、本研究は患者本人が承諾の上、実施したことである。
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