慢性腎臓病の腎予後における腎血管病変の意義について 【目的】慢性腎臓病(CKD)の腎予後には、糸球体病変および尿細管間質病変が重要と考えられているが、血管病変の関与は十分に明らかにされていない。そこで、今回、CKDの代表であるIgA腎症を対象に、その腎予後と腎血管病変との関連を検討した。 【方法】当科にてIgA腎症と診断され、経過中に透析導入あるいは生検後5年以上経過を観察しえた124例を対象に、腎病理所見と腎予後(透析導入)との関連を後ろ向きにロジスティック解析を用いて検討した。 【結果】単変量解析では半月体形成、球状硬化、間質線維化、尿細管間質炎、小葉間動脈の線維性肥厚、輸入細動脈硝子化が、いずれも腎予後と有意な相関を認めた。半月体形成、球状硬化で調整した多変量解析では、輸入細動脈病変が、さらに半月体形成および間質線維化で調整した場合には、小葉間動脈病変と輸入細動脈病変が、いずれも腎予後と関連を示した。小葉間動脈病変と輸入細動脈病変に関連する臨床的因子としては、年齢、高血圧、腎機能低下であった。さらに、多変量解析の結果では、小葉間動脈病変には年齢が、輸入細動脈病変には年齢と高血圧が独立した関連因子であった。 【結語】IgA腎症をはじめ、CKDにおいて腎血管病変は腎予後に関与し、小葉間動脈病変の発症には年齢が、輸入細動脈病変には年齢と高血圧が重要であると考えられた。 なお、本研究は本学の倫理審査を受け、患者本人が承諾のうえ、実施したことである。
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