研究概要 |
持続式携帯腹膜透析(CAPD療法)は高ブドウ糖透析液の使用により,酸化ストレスが生じる。また長期(CAPD)療法による腹膜機能低下に,一酸化窒素(NO)の産生および代謝の異常の関与が推測されている。我々は,酸化ストレスによる腹膜機能低下を,活性酸素種とNOの相互関係に着目し検討してきた。したがって酸化ストレスによる腹膜傷害の解析に,リアルタイムでのNO測定が必要と考えた。これまで,NOの直接計測の報告はなく,本研究では,透析液排液中のNO濃度をNOセンサを用いて直接計測し,CAPD療法におけるNO動態の基本的知見を得ることを目的とした。採取した透析液排液中にカテーテル型NOセンサ感知部を浸し撹拌しながらNO濃度を測定した。NOセンサによるNO測定の原理は,ポーラグラフィーによるNO酸化電流値の計測値で,それを濃度に換算した。一方,NO酸化物の濃度測定は,NO_2^-をグリース試薬で反応させピンク色のアゾ色素を生成させ,その溶液吸光度を測定し濃度を換算して求めた。NO_3^-は,還元カラムでNO_2^-に還元して測定した。その結果,透析液排液中にはNOが計測され得るレベルで存在し,経時的に変動していた。NO濃度は,透析液交換直後から1時間までは増加し,2時間後,3時間後と次第に低下した。NO酸化物の濃度は,逆に次第に増加を認めた。NO濃度とNO酸化物濃度の経時的推移に大きな差を認めた。CAPD療法におけるNOの動態をより正確に把握でき,今後の治療・診断法の確立に寄与すると推測される。
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