研究概要 |
私たちは,初年度,アンジオテンシンII(AngII)1型(AT1)受容体において,受容体自身の持続的自然活性の存在やインバースアゴニスト(Inverse agonist,逆作動薬:受容体が持続的自然活性を持っている状態からその活性を抑制する薬)の存在をin vitroにおいて証明した。したがって,このインバースアゴニズムの有無が,in vivoにおいてどのような役割を果たすかを検討した。モデルはDahl食塩感受性ラットモデルを使用した。薬剤は,ARBの中でインバースアゴニズムのあるオルメサルタンとインバースアゴニズムの無いオルメサルタン類似化合物を使用した。Dah1ラットに9週目より4%食塩含有食餌を与え,16週目から21週目にかけては,これらのラットを以下の任意の3群に分割した。(1)オルメサルタン投与群(2)オルメサルタン類似薬剤投与群(3)コントロール群→塩分負荷のみ行った群。尚,各群において,8週目,15週目,21週目で血圧測定,心エコー,尿検査を施行した。結果は,(1)治療経過中のオルメサルタン投与群と類似化合物投与群との間に血圧差は認めなかった。(2)類似化合物投与群と比較してオルメサルタン投与群は蛋白尿を抑制した。(3)類似化合物投与群と比較してオルメサルタン投与群は尿量や尿中Na排泄を抑制した。以上のことより,インバースアゴニズム作用をもつARBは,その作用を持たないARBよりも有用であると考えられる。インバースアゴニストが持つ効果の一つとして,降圧させることなく腎障害を著明に抑制することが期待される。
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