研究概要 |
前年度までに、AQP11ノックアウトマウスの腎臓では、(1)AQP11の欠損により近位尿細管上皮細胞にER stress由来のアポトーシスが誘導され細胞が脱落する。(2)脱落した尿細管上皮を補うために残存している尿細管上皮細胞の増殖が刺激されるが、これは異常なmTORの活性化を惹起し、最終的にのう胞形成に至る、という発症病理が想定されることを示してきた。しかしながら、AQP11の欠損によって引き起こされる直接の現象には不明な点が多く、また近年多発性嚢胞腎の発症機序に深くかかわるとされているprimary ciliaとの関連も不明のままであった。そこで今年度はこの点について集中的に検討した。まず、AQP11ノックアウトマウスと野生型マウスの腎臓におけるprimary ciliaの形態を抗acetylated tubulin抗体を用いた免疫組織化学法にて検討したところ、AQP11ノックアウトマウスの腎臓でもprimary ciliaは存在しており、形態学的には野生型と区別できなかった。次にそれぞれのマウスからマウス胎児性繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast,MEF)を調製し、細胞の形態・増殖の様子を観察したがこれにも差異を認めなかった。さらにMEF細胞のprimary ciliaも上記と同様に検討したが、やはりAQP11ノックアウトマウスと野生型マウスとの間に差異は認められなかった。従って、AQP11ノックアウトマウスのprimary ciliaは解剖学的にはほぼ正常と考えられた。そこで現在、primaly ciliaの機能を検討する目的で、fura-2を用いたカルシウムイメージング法にて、MEF細胞におけるflow-induced Ca signalingを検討している。
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