研究概要 |
今年度は主に以下に示す,2点に関して検討した.一つ目は,視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)とその他のMSに群類し,これまで日本人MSとの相関が示されているDRB1^*1501,DPB1^*0501,^*0301との関連を再検討した.その結果,OSMSではDPB1^*0501が対照に比して高頻度であったが,DPB1^*0301は1例もなかった.DPB1^*0301(-)の患者におけるDPB1^*0501の頻度はOSとそれ以外のMSとで同頻度であった.これらのことからOSMSとDPB1^*0501の相関は特異ではなく,OS以外のMSとDPB1^*0301との特異的な相関に起因すると考えられた.二点目は,脊髄MRIにて3椎体以上の病変(LESL)を有するMS患者の特徴を分析することによって,"attack-related severity(attack-related lesion expansion)",臨床経過および病変分布の3つの要因(軸)に基づいた3次元的病像把握の重要性を検証し,それを規定する関連因子,特に遺伝的背景としてのHLA遺伝子多型およびCTLA4遺伝子多型との関連の有無を検討した.その結果,LESLを有する群は,少なくとも一部,遺伝的に規定されたCTLL4分子によるT細胞のdown-regulationが関与している可能性があり,病変分布の特異性はHLA-DP多型が関与している可能性がある.LESLの形成に関わる病態が脊髄にのみ影響するとは考えにくく,視神経,大脳,小脳,脳幹における"attack-related severity(attack-related lesion expansion)"の標準化とそれを用いても多数例での検討が病態把握のみならず治療方法の発展・選択に重要であると思われる.
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