今年度は、これまで多発性硬化症(MS)において疾患感受性遺伝子として注目されているHLAを中心に解析した。MSにおけるオリゴクローナルバンド(OCB)の意義は重要で、欧米でのデータではMSの9割以上に陽性を示すとされている。しかし、日本でのMSにおけるOCBの陽性率は50-70%と言われ、欧米に比べ有意に低い。これまでの研究では、MSでは、HLA-DRB1^*1501との関連が推測されているが、我々は、OCB陰性群ではHLA-DRB1^*1501ではなくHLA-DRB1^*0405を有することが多いことを報告した。最近、Swedenのグループが、OCB陰性群では、HLA-DRB1^*0404を有することが多いことを発表したが、HLA-DR4においては人種差がある。DRB1^*0405はアジア系民族に特有の対立遺伝子であり、白人では稀であるのに対して、白人ではDRB1^*0404は、頻度の高い対立遺伝子であり、日本人では極めて稀である。DRB1^*0405とDRB1^*0404は、DRβ鎖の第3多様性部分配列に、QRRAA motifを共通に持つとされ、抗原提示能が近い可能性があり、Swedenのグループと我々の結果の違いは、同じ意味を持っている可能性がある。更に、我々はOCB陰性DRB1^*0405陽性の群の発症年齢、病型、重症度等の臨床的特徴の有無を検討したが、今回のデータでは有意なものは見いだせなかった。
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