(1)ミッドカインの神経系細胞に対する作用の検討 ミッドカインは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の神経症状を悪化させることから、ミッドカインの直接的な神経細胞傷害に対する作用を培養大脳皮質神経細胞を用いて検討した。その結果、神経細胞傷害は認められず、神経細胞への直接的な作用はないものと考えられた。同様にオリゴデンドロサイトの株化細胞に対しても細胞傷害作用は認められなかった。 (2)ミッドカインの実験的自己免疫性脳脊髄炎発現における作用の検討 これまでの研究で、MKノックアウトマウスに誘導した実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞(Treg)の増加によって抑制されることを明らかにしたが、今年度は、その詳細な機序について解析した。その結果、MK抑制によりCD4+T細胞でのSHP-2発現が低下し、STAT5リン酸化を介したFoxp3の発現増加とそれに伴う抗原特異性Tregの活性化が誘導された。これらのことから、自己反応性Th1/Th17細胞の免疫反応の抑制および中枢神経系の炎症細胞浸潤が抑制されることにより、EAEの発症が抑制されるものと考えられた。さらに、EAE発症後に、抗MK RNA aptamerを投与したところ、有意に神経症状の改善が認められた。aptamerを用いたMK阻害は、多発性硬化症をはじめとする自己免疫疾患に対する新たな治療戦略になりうるものと考えられた。
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